- フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術 (PHPビジネス新書)
- feedback
- 1.【情報通知】 たとえ耳の痛いことであっても、部下のパフォーマンス等に対して情報や結果をちゃんと通知すること (現状を把握し、向き合うことの支援) 2.【立て直し】 部下が自己のパフォーマンス等を認識し、自らの業務や行動を振り返り、今後の行動計画をたてる支援を行うこと (振り返りと、アクションプランづくりの支援)
- コーチングに代表されるように、近年の人材育成方法は、相手に「自分の力で気づかせること」を非常に重視しています。しかし、きちんと成長に必要な情報を理解していない部下は、自分で「気づこう」にも限界があります。
- では、なぜこのような「神話」がつくられてしまったのか。それは、当時の職場には上司が特に意識して人材育成を行わなくとも、「部下が育つ」諸条件が一通り揃っていたからです。 その条件とは、 「長期雇用」「年功序列」「タイトな職場関係」 の三つです。
- 皆さんは、「人が大きく育つ瞬間」とはいつだと思われるでしょうか。それは、「成功体験」をしたときよりも、「大きな失敗」をしたときです。
- 中間管理職の仕事の難しさは、一言で言えば、 「他者を通じて物事を成し遂げなければならない (Getting things done through others) 」 ということです(図表5)。これは、最も有名なクーンツとオドンネルらによる「マネジメント」の定義ですが、この一文には、マネジメントの奥深さが秘められています( 注6 )。もう少し別の言葉で言うならば「仕事を任せても、放置せず、他者に成果をあげさせること」です。
- 時代のせい、環境のせいにしていても何ら問題は解決しません。 私たちは、「動かなくて」はなりません。 私たちは、「動く」ことで、「成果」を残さなければならないのです。
- この十年の迷走を踏まえ、私たちは今一度この「二極化した思考」を改める必要があります。「気づかせるのか? それとも教え込むのか?」という二項対立の状況に終止符をうち、これらのバランスをとりながら、部下育成を行う必要があります。かくして注目されているのが、これら二つを大きく包含する概念であるフィードバックです。
- フィードバックとは、 1.【情報通知】 たとえ耳の痛いことであっても、部下のパフォーマンス等に対して情報や結果をちゃんと通知すること (現状を把握し、向き合うことの支援) 2.【立て直し】 部下が自己のパフォーマンス等を認識し、自らの業務や行動を振り返り、今後の行動計画をたてる支援を行うこと (振り返りと、アクションプランづくりの支援) の二つの要素から成立します。
- フィードバックこそ、最強の部下育成方法 ・上記2つの部下育成を包含するのが「フィードバック」 1.【情報通知】=ティーチング的 たとえ耳の痛いことであっても、情報や結果を通知すること (現状を把握し、向き合うことの支援) 2.【立て直し】=コーチング的 部下が自己の業績や行動を振り返り、行動計画をたてる支援を行うこと
- ピープル軸とは、ワンセンテンスで申しあげますと、 「人が業務の中で成長するのは、職場の人たちから、さまざまな関わりを得られたときである」 という考え方です。
- 本人の成長にとって最も重要なことは、外部からの情報通知によって、自分の行動に乗り越えるべきギャップが存在することを認識し、自分の行動や結果にしっかりと「向き合うこと」です。フィードバックの第一の要素は、これを支援します( 注 18)。
- 【事前】……情報収集:SBI情報の収集 ↓ 【フィードバック】 信頼感の確保 事実通知:鏡のように情報を通知する 問題行動の腹落とし:対話を通して現状と目標のギャップを意識化させる 振り返り支援:振り返りによる真因探究、未来の行動計画づくり 期待通知:自己効力感を高めて、コミットさせる ↓ 【事後】……フォローアップ
- なぜなら、相手に刺さるようなフィードバックをするためには「できるだけ具体的に相手の問題行動の事実を指摘すること」が必要だからです。よって、私たちはフィードバックを行うために必要なデータを、事前に部下の行動を観察することで徹底的に収集していくことが求められます。
- SBIとは、シチュエーション(Situation)、ビヘイビア(Behavior)、インパクト(Impact)の頭文字をとったものです。 ・シチュエーション(どのような状況で、どんな状況のときに) ・ビヘイビア(部下のどんな振る舞い・行動が) ・インパクト(周囲やその仕事に対して、どんな影響をもたらしたのか。何がダメだったのか)
- その上で欠かせないのが 「1on1」 (ワン・オン・ワン) 、すなわち 一対一で行う「上司─部下」の面談 です。近年では、短時間でもよいので、上司と部下間の面談の頻度をなるべくあげ、たとえば一週間に一度、部下の話を聞くといった取り組みが多くの企業で行われるようになってきまし
- 部下のことを把握するためには、短時間でいいので、頻繁に行うことです。一回にかける時間は十五分程度でもかまわないので、隔週一回は行いたいものです。私の研究部門では、隔週で一回十五分、部下に対して「1on1」を行っています。
- SBI情報を蓄積する上で、もう一つおすすめしたいのは、「朝の声かけ(職場回遊)」です。毎朝、出勤したときに、職場を回遊して、一人ひとりの部下に、一言、二言の声かけをすることです。
- こうした失態を防ぐために、私たちマネジャーが心がけなければならないことは、 「トライアンギュレーション ([[三角測量]]) 」 をすることです。たとえば、Aさんについて何か良くない噂を聞いたら、「最近、Aさんってどうなの?」などと、第三者にも一度話を聞いてみるのです。
- 大人が何かを学ぶとき、行動を変容させるときには一定の「痛み」がともなうのです。しっかりと相手に向き合い、このセッションの目的を伝え、そのうえで、ともに改善していこうと誘うのがポイントです。
- 鏡のように客観的に話すコツは、「私には、先日のあなたの行動は、こういうふうに見えるけど、どう思う?」というように、「~のように見える」と話すことです。英語で言えば「It seems」(~のように見える)の感覚です。すると、相手も、自分の言い分を主張する余地があるので追い詰められることがなく、あなたの指摘を素直に受け止めてくれる可能性が高まります。
- この段階での部下の振り返りのために、マネジャーは具体的には次の三つのポイントについて話してもらうように、導いていきます。それは「 What?(何が起こったのか?)」「 So what?(それは、なぜなのか?)」「 Now what?(これからどうするのか?)」の三つです(図表 17)。
- まずは、過去や現在、起きていることの全貌、自分の問題行動、その背景をすべて部下に言語化してもらいます。マネジャーから指摘された事実に対して、自分は過去・現在にどのような状況で、どのような行動をとり、それがどんなインパクトにつながっていたのかを考えて言葉にしてもらいます。 なるべく具体的に、詳細に、問題発生のプロセスを再現させることが重要です。場合によっては、「Who(誰が)」「When(いつ)」「Where(どこで)「What(どんなことをした)」などについても詳しく「問う」てみるのがいいでしょう。 問題行動が起こっている場面を再現できていないうちは、おそらく、マネジャーの提示したSBI情報をしっかりと 咀嚼 できていないと考えられます。「What?」を描写できないうちは、問題行動の改善にはつながり
- 「So what?」とは、「What?」で描写したような問題行動が、「なぜ」生まれたのかを、真因探究することです。自分の行動や認識のうち、何が良くて、何が良くなかったのか。本当の原因が何であったのかを、部下の口から言語化してもらいましょう。
- 最後の「Now what?」とは、今後、めざすべきゴールに向かって、部下がどのように問題行動を改めるのかについて部下自身に「決めさせる」部分です。部下には「新たな行動計画」をつくらせ、新たな目標を確約させます( 注 26)。いわば、これは上司と部下の「契約」です。
- 期待通知:自己効力感を高めて、コミットさせる これでフィードバックは終了です。 上司からしっかりと今後の期待を通知し、エンディングにつなげます。この段階で、部下は痛みを感じているとは思いますが、二つのポイントを伝えて、しっかりと送り出してあげることが大切です。
- 第一のポイントは、上司が しっかりと期待を伝えること です。フィードバックを受けた個人を「孤独」にしないことです。
- 第二のポイントは 「再発予防 (Relapse prevention) 」をすること です( 注 27)。 たいていの場合、問題を抱えた部下は、これまでにも自分の問題点について何度も指摘を受けてきた人が多いと思います。しかし、そうであるにもかかわらず、彼らは、自らの問題を解決できなかった。すなわち、問題を一度は解決しようとして、また「再発」してしまったということになります。 「再発予防」とは、このような問題を抱えている人に対して、「問題を起こすな!」と言い続けるのではなく、「問題が再発することを前提」にして、その「予防策」を事前にたてさせるということです。
- 【事後】フォローアップ フィードバックは、フィードバック面談では終わりません。そこからのフォローアップとモニタリングが決定的に重要です。 また、フィードバックは一度きりで終わることは 希 です。
- たとえば、いつも締切りに遅れる部下がいたとしましょう。その場合、「君、いつも締切りに遅れてないか?」と抽象的に言うのではなく、「この仕事の提出が、締切りより三日遅れましたね。その前にお願いしたこの仕事も、締切りを二日過ぎていました」というように具体的にSBIを述べます。
- チェックポイント5.あなたは、再発予防策をたてているか? フィードバックのクロージングでは、上司は部下に期待を伝え、その後に、「再発予防策(Relapse prevention)」も考えてもらうとよいと思います。 「再発予防策」は、もともとアルコール依存症やギャンブル依存症など、依存症の治療として発展してきた手法です。 たとえば、アルコール依存症の人に「飲むな」と言っても、病院から出てきて目の前にビールの自動販売機があればどうしてもそれを買いたくなってしまいます。そこで、再発の原因として考えられることを次々と挙げてもらい、「こうなったらどうするの?」と一つひとつ対応策を考えていきます。「再発する可能性が決して低くはないこと」を前提に、事前にその対応策を考えてもらうのです。
- Tips:フィードバックの内容も記録する フィードバックの最中には、部下がさまざまなことを言ってきます。フィードバックの途中でそれができるかどうかは場面にもよりますが、フィードバックで部下が話した内容、上司と部下間で合意した内容については、きちんと「記録」しておくことをおすすめします。
- かつて私がお会いした管理職の方の中に、その日の面談で話した内容を、自分だけでなく部下にもまとめてもらい、「提出」してもらっているという方がいらっしゃいました。そうすると、備忘録になるだけでなく、部下が面談での話をどのように受け取っているかが確認できるそうです。 「自分が熱心に伝えたつもりの肝心なことがぽっかり抜けている。もっと繰り返し言った方がいいな」「言ったつもりのないことが書かれている。何か勘違いしているのではないか?」などということがよくあり、日頃の指導に役立っているそうです。いずれにしても、メモなどで記録してフィードバックを振り返ることは非常に有効でしょう。
- Tips:フィードバックは「即時」と「移行期」にこそ行う 先に述べましたように、フィードバックには鉄則があります。 一つ目は「即時フィードバックの原則」です。「鉄は熱いうちに打て」という言葉がありますが、フィードバックが必要だと感じたら、できるだけすみやかに、その機会を設けることが大切です。
- 仕事における役割が変わることを人材開発の用語で 「トランジション (Transition:移行期) 」 といいます。このトランジションがあった直後というのは精神的に不安定になる一方、外からの声を受け入れて変わりやすいときでもあります。「カチンコチン」にかたまってしまってから厳しいフィードバックで変化させるのは極めて大変なことですから、マネジャーの皆さんは、部下のトランジションの時期を逃すことなく、フィードバックすることが大切です。
- 部下が自分を変えようとしないならば、いわば「外科的手術」しか方法はありません。それは、配置転換、降格、組織からの退出ということになります。フィードバックは、配置転換、降格、退出などの血生臭い人事施策とセットで考えるのが「鉄則」
- その他に、フィードバックで心がけていることはありますか? 森岡 ストレートに言うことと少し矛盾するように思えるかもしれませんが、「決めつけない」ことは心がけています。いくら情報収集をしても、絶対的に正しい事実をつかめるということはありえません。物事というのはすべて関係性の中で相対的でありますから、真実は一つではないはずです。
- ○○の神様」には「昔は素晴らしかったかもしれないけれど、今は成果を出せていない。そして、評価の対象になるのは、過去のあなたではなく、今のあなたに対してである」ということを率直に伝えます。そのうえで、「成果を出すためには、今必要な技術を新たに学び直さないといけない」と、今の位置をはっきりとフィードバックして、過去の自己像をアンラーニング(Unlearning : 学習棄却)してもらう必要があります。
- たとえ部下に大きな非があるように見えたとしても、一方的に言うのではなく、「君なりにいろいろ考えたことがあったんでしょ? あのとき、何を考えていたの?」というふうに、言い分を聞くのです。
- あとは、上司と部下の間で、最初に目標をきちんと共有しておくことも、けっこう重要だなと思います。この目標がズレていると、適切なフィードバックができなくなります。
- そのときに、「この五年で何をやりたいか」を自ら話した後で、「私が五年後、どんなことをやっていると思うか」を同年代の研究者からフィードバックしてもらうのです。すると、自分と相手が考える「五年後」にギャップが生じます。
- 最も重要視しているのは、「部下が将来、どんなビジョンを描いているのか」です。この会社で何を実現したいのか。社長をめざしているのか。実は他の部署に異動したがっているのか。はたまた当社で学んだことを生かして、独立開業をしたいのか──。こうしたことを明確にして、初めて、部下の将来を考えたフィードバックができます。